AIRCOOLED/RD

高回転は焼付きが怖いんだよね~

RDの救済に向かう その2

この日友人は、「今日中にエンジンをかかるようにしたいんだよね~!」なんて事を言っていたので、どうも簡単に考えているようだが、長期放置されたキャブレターのOHを数時間で終えようなんて無理なのだよ!!
昔の事を思い出してみると…どうもこういう所は昔から変わってないようである。
そんな感じなので、OHしようにもコンプレッサーはおろか、キャブクリーナーや洗浄する為のブラシさえも用意していない。
こんな状態でキャブレターのOHしようなんて、何考えてんの?と言うしかなかったが、限りなく空に近い泡式の洗浄剤(エンジンフォーミング何とかって言うやつ)が見つかり、十分とは言えないが、OHらしき事は行う事が出来た。
例によって?この友人も意味不明ではあるが、キャブレターのOHは行っているとの事だった。
だが、汚れの状態を見る限り、メインジェット等に分解された形跡が無い…
メインジェットを外しメインノズルを取り出していくと、汚れが山盛り出てきた!!(話が違うぞ…)
片方のキャブレターも全バラを行い、十分ではなかったが汚れを落として完了。

(追記)
フロートの修正を行った事を思い出したので記事に残す事にしました。
フロートの確認を行ったところ、左右の浮きに2mm程の歪みがあったので修正を行なう事にした。
通常フロートは、始点にあたるフロートピン側を中心に、浮きが左右に二つ付いていており、始点の根元にあるベロを曲げて油面を調整する。
フロートに歪がある事を知らずに油面を調整した場合、油面に対し左右の浮きの高さが違う事になるので、浮力に誤差が生じ、正確な油面が出す事が出来ない。
修正には平らな場所が必要だが、この時はガレージ内にある水槽の、ガラス板を使って修正を行った。
修正は、フロートピンが通る筒の部分をガラス板に当て、左右の浮きが同時にガラス面に接地するようにする。
この時、この3点以外の部分がガラス面に接地していない事を確認する事。
歪については、水平、垂直方向全てにおいて確認を行い、曲がりがあれば修正を行う。
フロートの実測による調整は、これらの修正が終わった後、ベロを調整し行う事になる。

油面調整に関しては、これ以外に二ードルバルブ(フロートバルブ)のスプリングテンションの減少、フロートの浮力減少などにより、フロート高実測による油面調整のみでは、実際の油面に反映されていない場合が考えられる。
この為、より正確さを求める場合は、実油面で調整する必要がある。
燃焼全般に関する不都合箇所として点火系の不具合がこれにプラスされる。
これらの不都合要因は、複合的に発生している事が殆んどのため、シリンダー内の燃焼状態を左右同じにする事を難しくしている。
言うまでも無いが、旧車はこれらのオンパレードなので、不具合解消のためには、全ての箇所において、確認、調整、必要に応じて部品の交換などがレストア時には必要になる。

このRDに関しても、これらの事が必ず当てはまる事になる。
(追記終)


この友人、バイクはハーレーダビッドソンを所有しており、カスタムはする様だが、普段、重要箇所の整備までは自分で行っていないようだ。
そんな男が突然、目覚めたかのように旧車を立て続けに買い集めている。
現状のRDは、ブレーキが引き摺った状態で、走れた状態ではない。
まだまだ、整備しなければならない箇所がある。
キャリパーは、ピストンの固着と格闘の末取り外しOHしたと言っていたが、話を聞いた限りでは、キャリパー内部の掃除が不十分のようである。
マスターシリンダーが全くOHされていないので、かすが溜まっているのではと思う。
リターンポートの貫通を確認し、各シール類の状態、水の混入が見られたとの事だったので、ピストンとシリンダー内の状態を確認する事が重要に思う。
私は、「お前!死ぬよ…」と脅して置いた。

その後、キャブレターの調整に入ろうと、スロットルワイヤーを確認するが、何かが違う?
まず、スロットルを引いた時に抵抗があり、グリップを緩めてもスロットルが戻らない為、CRCを吹くと解消!
また、スロットルの引きをオイルポンプとキャブレターとに分岐させる樹脂で出来たシリンダー部分の後端が壊れており、ワイヤーが真直ぐに固定出来ない・・・
ここは、インシュロックで応急的にフレームへ固定し、ワイヤーが真っ直ぐに固定できるようにした。
この後、スロットルバルブの引きを合わせる為、キャブレター横のプラグを外し、スロットルバルブを全開にした時に気が付いたいた。
分岐以降の2本のスロットルワイヤーに、他車の長い物が流用されているようで、スロットルバルブが全開の位置まで上がらないのである。
トップキャップのアジャスターを一杯に上げても調整出来ないのだ!
仕方なくエンジンを掛けるのを優先する事にして、ワイヤーの引きが同じになるように調整のみ行う事にした。

スロットルストップスクリュー、エアスクリューを規定値に調整した後、エンジン始動となった!
メインスイッチをオンにするが、インジケーターランプが点灯しない・・・
ヒューズ回りやプラグコード、プラグキャップなどに振動を与えると点灯した!
RDの最後の抵抗か?

コックを開いた後チョークを引き、キックするとRDのエンジンがゆっくり動き出した!
アイドルストップスクリューでちょっと調整してやる。

暖気されるに従い排圧も上がって、アイドリングも安定して来た。

また1台のRDが、永い眠りから蘇った瞬間だ!!

スロットルを煽ると、元気に、答える様に煙を吐いている。

マフラーは、RD特有の低音に制御された独特の音だ。

気付くと、時間は既に午後7時を過ぎている…

閑静な住宅街に、RDの排気音がこだましていた。

窓が、ガラッ!と開き、「近所迷惑でしょ!」と
今は高齢となってしまったお袋さんに、友人が怒られているのを横で見ている。


何か遠い昔に戻った気がした。

(終)